前回、母の話をさせてもらいましたが、あのお話だけだと母の優しさを伝えるのに不十分だったと思い、今回は母と私の息子の想い出を書かせていただきます。
息子が生まれてしばらくは一人息子の誕生に喜び、愛情をたっぷり与えて育ててきました。本当に幸せなひと時だったと思います。
しかし、幼稚園入園を目前にして会社が倒産の危機に陥り、私も仕事をしなければならなくなりました。
もちろん、息子の面倒を見ながら両立する余裕はなく、一刻も早く誰かに預けなければならない状況でした。大切な息子を預けられる相手はそう多くはなく、母にお願いすることにしました。
母は「わかった。あなたが決めたことだから応援する。この子は私に任せて仕事に専念しなさい。」と私達のお願いを受け入れてくれました。母の想いに心の底から感謝し、この時の恩は今でも忘れられません。
それから息子が小学校1年生まで、私は東京、息子は愛知で別々に暮らしながら、仕事の都合が付くときは合間を縫って、東京や出張先から息子に会いに行く日々を過ごしていました。息子の幼少期はほとんど母が面倒を見てくれたわけですから、当然私のときと同じように厳しい教育をしているのかと思いきや、息子にはデレデレでずっと甘やかしていたようです。息子を相手にしている母を見てびっくりしました。
晩年、母はよく布団で横になっていました。
理由もなく、ただ楽だから布団に入っていたのだと思います。そんな母に無邪気な息子が
「おばあちゃん。
どうせ死んだらずっと寝てられるのになんでいつも寝てるの?…。」
息子から容赦なく発せられた悪気ない言葉に強烈なショックを受けたそうですが、本当にそうだから何も言い返せなかったようです。後から笑いが出てきたとか…(笑)
この後日、母から一本取られたとこの話をされて、私も容易に光景が目に浮び二人で大笑いしました。
後から息子に聞いたら母に構ってほしくてそのように言ったようです。
悪気のない純粋な言葉ほど、ダメージが大きいですよね(笑)すごい切れ味の正論でした。
息子が小学校に上がると私の仕事、会社の状況にもある程度目処が立ってきたので、息子と一緒に暮らすようになりました。
息子は愛知から東京の方に移り住むことになるわけですが、夏休みや春休みなどのちょっとした長期休みに母に預けることが恒例になっていました。
少しくらいホームシックになっているかな?と電話を掛けると母から「今は二階で一人で遊んでるよ」と予想に反して全力で楽しんでいる息子。「なんだよ、コイツ~!」と思う一方で、早いうちから自立させてしまったのかなと申し訳なさと少し寂しい気持ちが湧きました。
2~3週間ほど預かってもらって、休みが終わる2~3日前に息子が戻ってきたため、洗濯をしようとズボンのポケットを見ると汚い洗濯バサミがポトッと落ちてきました。母の家で洗濯の拍子に洗濯バサミが入ってしまったのかな?と捨ててしまいました。
「何がないの?」と聞いてもはじめは応えません。
その後も探し続け、見つからないと観念したのか。
「おばあちゃんの洗濯バサミがないんだ…。」
という息子…。ギク…。
話を聞くと、母と別れることが寂しくて、母の家に落ちていた洗濯ばさみを自分のポケットに入れて持って帰ってきたそうです。少しジェラシーを感じてしまうエピソードでした。
本当に仲の良かった二人。母が亡くなるまで山あり谷ありでしたが、息子をここまで愛してくださったことに心から感謝しています。また、母と息子のエピソードはどこかでお話出来たらと思いますのでお楽しみに。
中島香里
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