ヒューマンストーリー

　　　　

先生から待ちに待った連絡が私の携帯に入りました。

「なんとか峠を越えました。」

その第一声を聞いただけで私は体の力が抜けてしまいました。
良かったぁ～…。

　　　　

とりあえず、もう少し入院して経過を診て、問題がないようであれば自宅に連れて帰ってよいとのことでした。 　　　　

問題なく、その観察期間も終えて家に戻ってきたピッキー。
前と変わらず、家の中ではしゃぐピッキー。
１か月前と変わってもどってきたのはサイズ感だけでした。

入院ついでにワクチン注射もうってきたピッキーは、今までできなかった旦那さんとの散歩を徐々にスタートしていきます。
旦那さんのさぼり気味だった運動ですが、ピッキーがいるのでサボることがでません(笑)これから１５年近く続く旦那さんとピッキーの日課が始まりました。旦那さんは散歩のおかげでどんどん健康になっていきました。

いろいろなことに興味津々なピッキーは散歩や食事、お出かけなど毎日のイベントをすごく喜んでいました。
その逆に怒られたり、病院に行ったりと嫌なことには耳を垂れ下げて上目遣いになるピッキー。
わかりやすく感情を表現してくれるピッキーに犬という概念ではなく、本当に人と同じように接していました。
ラブラドールで頭もよかったので尚更かもしれません。家の内でも外でもプライベートの時間はいつも同じ空間で過ごしていました。

しかし、ピッキーがだんだん大きくなるにつれておうちも小さくなり、室内では飼えなくなってしまいます。
彼が騒いで動き回るごとに家の中がぐちゃぐちゃになるのです。
通常大型犬は外で飼う事が一般的で、お互い共働き、息子は学校で日中家で面倒を見れないことから、致し方なく玄関で飼う事にしました。私達も辛かったですが、何よりもピッキーがつらかったと思います。
「自分も家族なのになぜ過ごす場所が違うのだろう…。」とずっと生前感じていたのではないでしょうか。
でも彼は本当に自分の気持ちを押し殺すタイプでした。これは後のエピソードにもつながってきます。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ピッキーが５歳くらいのころ、新しい兄弟の白いトイプードル「モコ太郎」が家に来ます。新しい家族のスターが来たこと、並びに小型犬のため室内で飼われていたことにピッキーはとても嫉妬したと思います。私の中では贔屓をせず、ピッキーの方がお兄さんだったので優遇をしたつもりではいましたが、やはり自分だけ玄関で飼われていることは彼の中で埋められない寂しさだったと思うと今も胸が締め付けられます。それでもピッキーはモコをいじめるわけではなく、とてもかわいがってくれました。後からマロンも合流するのですが、室内犬のマロンにも変わらず、彼なりの愛情を与えてくれたのです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　

３匹で散歩する姿は近所でも名物になり、いつもいる番犬のピッキーに通学している小学生が「ピッキー！」と声をかけてくれたり、通行途中の方が通るたびにピッキーの様子を見に来てくれました。私たちの知らぬ間に彼は、多くの人たちから愛されるアイドルになっていたのです。

本当に幸せな時間だったと思います。これが当たり前のようにいつまでも続いていくものだと私も思っていました…。

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